2020年9月 1日 (火)

弱いネック

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Jerzy Drozd Legend 5は19フレット付近でジョイントされているのだが、固定された部分からヘッドに向かうネックが購入当初からごくわずかだが起きていた。もっとも、イェージィに限らず外国製のギター、ベースは、高価な楽器であろうとネックが反りやすいように思う。それは高温多湿な日本の気候が原因であり、楽器にとっては厳しい環境だと言われている。楽器以外にも、クルマにとっても非常に過酷な使用環境だと認識されており、世界の自動車メーカーが耐久試験に選ぶのは夏の東京だそうだ。

イェージィはネックが強くないのではなかろうか?という感触は入手後3〜4ヶ月ぐらいからあって、趣味の範囲で使うのであればともかくプロの現場で耐えられるような造りではなかったのではないか、と思った。少なくとも国内のプロ・ベーシストでイェージィを弾いている人を見たことがないし、海外でもパコ・デ・ルシアのバンドのベーシストが弾いているぐらいだった。もちろん自分が知らないだけで他にも多数ユーザーがいるのだろうけど、メディアに露出するほどの有名人が使うことはなかったように思われる。海外のベース・ブランド…古くはサドウスキー、フォデラ、近年ではレイクランド、長期間存続してベーシストに支持され続けているブランドは多くない。生き残るにはそれなりの理由があり、消えてゆくにもまた理由があるのだ。

イェージィがブランドを畳んだ理由の一つがネックの弱さであろうことは想像に難くない。これは新品の楽器を販売して何年か経ったのち、自分が作成した楽器をリペアする段階になって認識したのではないか?例えばサドウスキーは経年変化に備えてネック(指板)の形状を工夫してあり、ハイ起きしたネック(指板)を削ることによりストレートに戻し、長期間に渡って使い続けることが出来るよう設計されている。レイクランドはヘッド起きしないよう指板をナットからヘッド側へ延長して貼ってあり、さらにネック裏とヘッドの接合部は木の厚みを残している。

ウチのイェージィは制作後およそ9年ほど時間が経過しており、それは即ち日本に来てから9年という時間が経過しているということなのだが、それだけの期間を経てもなおネックがよく動く、ということだ。輸入ディーラーの話によると『イェージィは日本の気候に近いボックス内で完成した楽器をしばらく寝かせてから出荷している』そうだが、それでもなお日本の気候には馴染みづらいのかもしれない。

以下、調整の記録(2020年)。
1/13 Jerzy Drozd Legend 5 到着、電池交換
1/25 ネック逆反り
→ロッド緩めて、ローポジションのバズ解消
5/02 ネック順反り
→ロッド増し締め、12Fでリリーフ量0.5mm確保
6/07 ネック順反り
→ロッド増し締め、12Fでリリーフ量0.5mm確保
6/11 ネック逆反り
→ロッド緩めて、ローポジションのバズ解消
7/05 ネック順反り
→ロッド増し締め、12Fでリリーフ量0.5mm確保
7/09 弦交換
→DR Lo-Rider MH5-45 (45-65-85-105-125)
7/10 ネック順反り
→ロッド増し締め、12Fでリリーフ量0.5mm確保
8/19 ネック順反り
→ロッド増し締め、12Fでリリーフ量0.5mm確保
8/28 ネック逆反り
→ロッド緩めて、ローポジションのバズ解消

2~4月のあいだは順反りと逆反りを行ったり来たりしていて、弾きにくいと感じる程ではなかったため無調整。春を過ぎて湿度が増していくに連れてロッド調整の頻度も多くなる。一ヶ月に2〜3回まわしているわけだが、これはもう「ネックが弱い」という結論を出さざるをえない。他の所有しているベース、ギターもネックの調整は行うが、秋ごろに一回、春先に一回程度で、イェージィの調整回数は突出して多い。

イェージィは素晴らしいサウンドを持っているので調整さえ厭わなければ大きな問題ではない…と言いたいところだが、実際に週イチの頻度でトラスロッドを回す必要に駆られるのはツライ。うまく沖縄の気候に馴染んでネックが安定してくれると良いのだが。

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2020年2月 2日 (日)

Jerzy Drozd Legend 5

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Jerzy Drozd Legend 5を中古で購入した。スペインのバルセロナで制作されるハンドメイドのベースギターで、ラミネート・ウッド、複雑な象嵌や貝のパーフリングなど非常に豪奢な装飾を施した楽器を多数発表していたが、この2011年製の個体はシンプル。それでも、ボディトップは虎杢が浮き出したメイプル、ボディバックはマホガニーで、中をくり抜いたセミソリッド構造といった具合に、なかなか手が込んでいる。ボディトップの穴は大中小と3つあって何のカタチだろうと思っていたら、これはピックアップにも描かれている「鳥」なのだった(製作者のJerzy氏は自分の作った楽器を「Bird」と呼んでいる)。

ネックは35インチ、36フレット仕様。そんなハイポジションまで弾くことあるの?と思うでしょう。…まぁあんまりないですね。でもあると便利!これを積極的に活用するのであれば細めの弦を張ったほうが良さそうだ。ピックアップはオリジナルのシングルコイル一個、このPUのすぐ手前まで指板が来ているので、スラップで弾くときにプルしようとしても指の入る隙間がない。弦をつまんで引っ張るか?指板はバーズアイメイプルで、出音に高域のギリギリ・チリチリした嫌な感じが全くなく、スカッと抜ける。

湿度のためかネックが逆反りしつつあったのでトラスロッドを回して修正する。ローポジションのビリつきが解消され、楽器全体がよく振動するようになった。入手後2週間ちょっと経ってから実際のライヴで使ってみたのだが、パンチの強い、一瞬ウッドベースにも聴こえるようなエアー感のあるサウンドでゴキゲンな演奏が楽しめた。快楽度高し!

欠点は、プリアンプをオンにするとノイズが出ること。弦アースが施されていないので、ごくわずかではあるがノイズがずーっと出たままの状態になる。プリアンプのオン/オフスイッチ(またはミッドレンジの周波数切替スイッチ)に触れるとノイズは消える。ボディバックにある蓋を開けてコントロール・キャビティ内を見ると、キャビティの内壁にも蓋の内面にもノイズ対策のために銅箔が隙間なくビシッと貼られていて、その銅箔同士を丁寧に半田で繋いでいる。うーん、ここまでやってるのになんでブリッジにアースを落とさなかったんだろうか?

それから、フレットサイドの処理は国産の10万円台の楽器のほうが丁寧だ。もっとも、ノイズもフレットも全然気にならないので欠点といえるほどのものではなく、緻密な部分と粗雑な部分が同居しているだけの話。国産品が細部に至るまでいかに丁寧に仕上げられているかがよく分かる。海外の製品は高い安いに関係なく「まぁいいじゃん」的なところがけっこうあるように思う。

Steinberger XL2でベース探しの旅は終わった〜と安心してたけど、Jerzyに触れて、世界は広いなぁと感じています。まだまだ面白い楽器があるもんだ。

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2019年2月18日 (月)

D'Addario NYXL

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Steinberger XL2、E線の音抜けが悪くなってきたので弦を交換した。ダダリオのNYXL、スタインバーガー専用のダブルボールエンド仕様の弦だ。NYXLは発売された当初ギターに張って使ってみたところ大変良かったのでベースにも使い始めたのだが、特にXL2とは相性がいい。

XL2はA線が元気いっぱいなのに対してE線がおとなしすぎて、音量の落差も大きい(このあたりに設計年次の古い楽器らしさが感じられる)。弦がヘタってくるとその音量差がより顕著になり、E線を弾くときにピッキングを強くしても音が潰れるだけで音が抜けなくなってしまう。弦が新品だと、E線を強めに弾くことでバキバキした音を出して、A線との音量差を音質差で補うことができるのだった。

Nyxl

古い弦を張ることでしか得られないサウンドも確かにあるのだが、それはそういう音が必要とされるジャンルでそういう楽器を使えばいい。XL2には新品の弦がよく似合う。それから、楽器が古いからといって同年代のベースアンプで鳴らしたのではXL2の本当の姿を知ることはできない。最新鋭のベースアンプこそ、XL2が真価を発揮できる舞台なのだ。

新しい弦のメリットはたくさんある。柔らかい弾き心地、抜けのいい音、広いダイナミックレンジ、ピッキングに対する音の追従性、表現力等々。うん、メリットしか思い浮かばないな。じゃあデメリットは?ズバリ、お金がかかることでしょう。楽器を使う頻度にもよるけど短くて2ヶ月程度で張り替えの必要に迫られるわけだが、ダブルボールエンド仕様のNYXLは気軽に買える値段とはいえない。しかし、弦は消耗品であるのと同時に楽器の一部なのだ。僕は快楽を得るためにベースを弾いている。それなら、ヘタった弦を我慢しながら使うことには何の意味もない。苦行したいわけじゃないからね。プリアンプやエフェクターにはポンポンと高い代価を払うのに、音を出す大元である弦はケチるって、奇妙なことじゃないか?新しい機材を買うお金があったら弦を買いだめしたほうが楽しめるぞ…と、自分に言い聞かせるのだった。

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2019年2月11日 (月)

AET EVO-0605SHRF cable

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去年の11月、東京へ出張した際に楽器屋さんに立ち寄って前々から興味のあったシールドケーブルを購入してきた。オーディオ関係の線材を扱っている AETというメーカーが作った楽器用ケーブルで、お値段は5mのL-Sプラグ仕様で8500円ほど。普段使っているEx-pro FAが同じぐらいの価格帯で、自分としては、消耗品として買い換えるのに躊躇せずに済む上限あたりの値段だ。

Ex-proのケーブルに特に不満はなかったのだが、なんとなく「他にもっと良い物があるんじゃないか?」という気持ちがあって、Ex-proを使いながらも色々なケーブルを購入して使ってきた。しかし手元に残るのは結局Ex-proのケーブルだった。初代モデルであるS-1、モデルチェンジしたPlatinum、そしてFL、FA、どれも非常に良いケーブルで、特にFAは気に入っていて、新製品として発売された当初からずっと使い続けている。

さてAET EVO-0605SHRFという長い名称のケーブルの実力や如何に?ベースアンプに楽器から直結した状態で演奏スタート、うーん…中低域がスカスカだ。ギター用にはいいかもしれないがベース用としては低音が物足りなさすぎる。一曲演奏したあとアンプのセッティングを変えずそのままの状態でEx-pro FAに挿し替えて2曲目の演奏スタート、途端に音量が上がり低域が豊かに満たされていく。「やはりEx-pro FAに優るケーブルはなかった」新しいケーブルを試すたびに繰り返してきた感想が今回も出てきて、この日は最後の曲までEx-pro FAを繋いだまま演奏を終了して「ベースでAET EVOはもう二度と使うことはないだろう」と思った。

一週間後、さすがにもったいないのでもう一回ぐらいは試してみようと思い立ち、AET EVOを演奏で使ってみた。すると、前回の音は何だったんだろうというぐらいに出音が違っており、ズドンと低域が出てきて高域のきらびやかさも素晴らしい!自分の耳がおかしいのかなと思って、一曲演奏したあとアンプのセッティングはそのままでケーブルだけEx-pro FAに挿し替えてみると…驚いたことに、明らかにAET EVOのほうが音量が大きく低音もしっかり出ているのだった。なんで?先週はおろしたてでエレキのパワーが染み渡っていなかったから??いやー慣らし運転って大事なんだなぁ…。

そんなわけで、AET EVOを追加で2本購入し現在メインのケーブルとして使っている。Steinberger XL2との相性も良く、ガッツのある低音&煌めく高域を存分に堪能できる。AETで唯一気になるのは、扱う楽器店が限られていることだ。使い始めてからまだ三ヶ月しか経っていないので耐久性がどの程度なのかわからない。もし断線した場合(カットして半田付けし直せば取り敢えずは使えるようになりますけど)、Ex-proはどこの楽器店に飛び込んでも売ってるが、AETは東京まで買いに出かけるか、離島住まいの身としては通販に頼るしかない。

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2018年10月 8日 (月)

Steinberger XL2 所感

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2018年3月11日に入手して以来およそ半年が過ぎたSteinberger XL2。もともとは「NDロードスターに2人乗車した状態で積むことができるロングスケールのベース」という条件に合うベースが他に無かったという理由で中古のXL2を購入したのだが、予想を超える素晴らしいベースだった。これまでに購入して弾いてきたどのベースよりも気に入っている。いや、取り憑かれていると言ったほうがいい。僕が購入したのは1989年製の個体なので今から29年前に作られた楽器だが、平成も終わろうとしている今現在に於いて最新のベースと比べても何ら遜色のないベースだ。

Steinberger社は楽器メーカーとして今も存続しているけれど、グラファイト製の楽器は製作していない。製作コストが高くつきすぎるのだろう。僕は1987年頃に楽器屋さんで新品のSteinberger XL2を試奏したことがあって、その時はModulusのほうがいい音だと感じられたのでModulus Quantum4を購入した。それから30年余りが経過し、いまごろXL2に夢中になるとはね…。

おそらく、最新鋭のベースアンプを使って音を出していることにもXL2を良いと感じる要因があるのだろう。SWRのベースアンプが世に出て以降、ベースアンプの扱う周波数レンジは拡大され続けてきた。音楽再生メディアはLPからCDへと様変わりし、オーディオは高域・低域の両方向へ再生周波数が拡張されてきた。つまり、XL2が登場した頃のベースアンプではXL2の持つ音のすべてを再生しきれなかったのが、今のベースアンプであれば再生できるようになっており、それを魅力的な音色だと感じているのではないか。余談ながら、ヴィンテージ・ベースをヴィンテージ・アンプで鳴らすと当然のように素晴らしいサウンドが得られるのだが、アンプをモダンなものに換えると更に素晴らしいサウンドが得られることはもっと知られていい。

XL2のピックアップはEMGのアクティヴ・ピックアップなので、駆動に9V電池を要する。張った弦の種類に左右されず特有の音色を維持するベースもあるが、XL2は弦を変えれば音も変わる。EMGピックアップの特性もあって弦の音を忠実に出力しているとも言えるが、同時に、味気ないという印象にもなる。特に、ライン録りした音は誠に素っ気ない音で、2万円ぐらいのベースと大差ない。ところが、アンプで鳴らすと一変して抜けの良いやや派手目のサウンドに聴こえるのだから面白い。経験上ボディとヘッドの面積(体積)が小さいベースは低音が得られないと思っていたのだが、XL2はまったくの例外だ。ショートスケールのベースよりも全長が短くボディもコンパクトなのに重低音が飛び出す不思議よ。ああ、確かにコレは究極のベースだ。

XL2の欠点は特に見当たらない。強いて挙げればメンテナンス面、絶版製品であるため弦を除いて消耗する部品の供給体制が公式にサポートされない、というところだろう。じつは各地で個人制作家によるSteinbergerのパーツ制作&販売は盛んに行われており、ネット時代である昨今、情報・現物ともに比較的容易に入手可能となっている。楽器屋さんの店頭には並ばないが、通信販売であれば購入可能というわけだ。オンラインで修理やリペアを引き受けてくれるショップも有り、輸送費はかかるものの、故障したSteinbergerを抱えたまま途方に暮れるといった事態は避けられるようになった。いやー良い時代になったものだ。

専用弦が高価というのは生産量を考えれば仕方がないし、一般の弦が使えるようになるアダプターを購入すれば解決する問題だ。僕は専用のダブルボールエンド弦を張っているが、それは楽器の設計者の意図を尊重したいからであり、弦交換が楽だからだ。コスト面を考えても他のユーザーに専用弦を勧める気はない。

僕は楽器を改造するよりも弾く方に時間を取りたいタイプなので、一度各部の調整を行えば以後ほとんど調整不要なXL2はひたすら演奏に没頭できるベースだ。最初に弦を張ってそれに合わせてブリッジを調整、ピックアップの高さを調整して、一旦セッティングが決まれば、あとは弾くだけ。弦交換も同じ弦に交換していけばその都度行う調整は不要になり、弾く時間が増えるという次第。トラスロッドがないのでネックの調整も不要(というか、出来ない)。手を加える隙が少ないので、楽器をいじるのが好きな人にとってはあまり面白い楽器ではないかもしれない。僕が行った改造はただ一点、改造とも呼べないものではあるが、XL2を床に置いた時にボディエンドが直接床に接触するのを避けるためと、ネックを持って床から持ち上げるときに楽器が手前に傾くのだがその際チューニングノブが床と接触しそうになるため、対策としてボディエンドにゴム脚を貼った。ソルボセインがいいかなと思って調べてみると、ソルボセインは重量物を長期間載せておくと変形していくというので、プラチナシリコン製の脚にした。直径1インチ、半球状の黒い脚なので目立たず、楽器を床に置くときもポヨヨンと優しく衝撃を吸収してくれる。

XL2の美点は、音抜けが良いこと、タッチに対する反応が素晴らしいこと、ストラップで吊った時の重量バランスが良いこと、ピボットプレートによりネックの角度を任意に固定できること、温度や湿度によるネックの変化が極めて少ないこと、楽器自体がコンパクトで携行が楽なこと…挙げればキリがない。ただし、これを気に入るかどうかは人によって好みが異なるので、実際に自分の手で持って弾いてみなければわからないだろう。

XL2を弾くようになって、他のベースに対する興味がなくなった。造形面や機能面で面白そうだと思うベースはあっても、新たに購入したいかというと全然そういう気持ちにはならない。ついに、楽器に対する物欲が失せてしまったようだ…自分でも信じられないけど。

まぁそのぶん、演奏とか作曲の方に力を回せるからいいかな。

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2018年8月11日 (土)

Steinberger XL2、チューニング・ジョー交換

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Steinberger XL2のチューニング・ジョーが壊れたので新品と交換した。

6月13日に弦を新品に張り替えたのだが、しばらく経つと、ごく少しずつA線のチューニングが下がっていくことに気がついた。弦が不良品だったのかな?と思いつつもチューニングを合わせれば1ステージ普通に弾けたのでそのまま使い続けていたのだが、8月1日の夜、いつものようにチューニングしようとしたらチューニング・ノブを回す手応えが急に軽くなり、バチッという音がしてA線が外れた。弦が切れたのかな?と思って弦を見たがどこも切れたりしておらず、XL2のブリッジの一部=チューニング・ジョーと呼ばれるパーツが破損したことがわかった。

このパーツが壊れやすいというのはユーザー間では有名な話で、もちろん僕もそれを知っていたので「壊れる前に予備のチューニング・ジョーを買っておいた方がいいだろうな」と思っていた。しかし、安いパーツではないので実際に壊れないことには購入の踏ん切りがつかなかったのだ。来るべき時が来た、という感じで、パーツを発注した。

困ったのは、XL2のブリッジを分解する工具が手元になかったことだ。7/64インチという変わったサイズの六角レンチが必要なのだが、手持ちのレンチにはなく、メイクマンで探しても「扱っていない」と言われた。精密レンチという類の工具らしく、Amazonで探したらすぐ見つかったのでAmazonで発注。8月8日、工具とパーツが到着したので交換作業を行った。

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奇妙なことに、XL2のネジはインチ規格とセンチ規格が混在しており、ブリッジをボディに固定しているネジは7/64インチ、ブリッジ自体のトップ・プレートとボトム・プレートを固定するネジは3ミリ、チューニング・ノブを固定するネジは1.5ミリ。もしかしたら、前の持ち主がそのように交換したのかもしれない(余談ながら、ブリッジに落としてあるはずのアース線が見当たらなかった等々、今回の分解以前にも分解されていた形跡がみられる)。あとは特別な工具も必要なく素手で分解できる。ブリッジを上下2つに分割するのは、3ミリの固定ネジを緩めた状態でグイッと押せばいい。

壊れたのはA線のチューニング・ジョーだけだが、念のためE線D線G線のチューニング・ジョーも揃えて新品に交換した。購入した新品のパーツには金属ワッシャ2枚とそれに挟まれてナイロンリング1個が付属しており、これらをチューニング・ノブの根元に取り付けできるようになっていた。オリジナルのパーツは極薄の金属ワッシャが1枚なのだが、これをナイロンリングに換装するとチューニング・ノブの動作が滑らかになる、というのもユーザー間では有名な話なので、金属ワッシャ+ナイロンリング+金属ワッシャをそのまま取り付けてみた。

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すると、これらパーツを設置した厚みのぶんだけチューニング・ノブがブリッジ後方へ突出する状態となり、XL2を床に置いた際ノブが床と接触してしまうことがわかった。そこで、金属ワッシャを外してナイロンリングだけにしたのだが、それでも床に置いた楽器を持ち上げるときにノブが床に接触しそうになる。チューニングの手応えはどうか?というと、「金属ワッシャ+ナイロンリング+金属ワッシャ」「ナイロンリングのみ」いずれもオリジナルよりも抵抗が増えてややグニャッとした感触になる。滑らか、といえばまぁそうかな。しかし、これであれば見た目も含めてオリジナルのままで良いのではないかと思い、最終的には「オリジナルの極薄金属ワッシャ+リチウムグリス(有機モリブデン配合)」に着地。ナイロンリングよりも滑りがよく、チューニング・ノブの回し心地にダイレクトな手応えもあって良好だ。もちろん、楽器を床に置いた時チューニング・ノブが床と接することはなくチューニング・ノブと内部シャフトに余計な応力がかかることもない。

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8月5日にライヴ本番があり、その時はXL2が使えなかったのでAlleva-Coppolo LG5を弾いたのだが、十年来の相棒であるLG5よりもXL2を身体が求めているのがわかった。XL2がこれほど我が身に馴染むとは想像していなかっただけに自分でも驚いてる…単に新しもの好きってだけかもしれないけど。ま、贅沢な話ですね。

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2018年6月18日 (月)

電子譜面 GVIDO

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GVIDOは、テラダ・ミュージックスコアが開発し山野楽器が販売する電子譜面である。最大の特徴はA4見開き仕様であること、つまり左右の2画面で1セットとなっていることだ。GVIDOは表示部分に電子ペーパーを採用しており、バックライトがないので画面は発光しない。通常の紙と同じように、外来光を画面が反射するのみであり、暗い場所では見えにくくなる。

 

電子譜面を購入するに際してGVIDOにするかiPadにするか半年以上逡巡した挙句、GVIDOを選んだ。僕としては、普段の仕事で目を酷使することもあって眼精疲労の軽減が必須なのに加え、たびたび演奏の現場でiPhoneやiPadを譜面表示&歌詞カードとして使う人々を羨ましい思いで見てきた自分であるからには、そういった人達とは違ったガジェットを持ちたい!という気持ちが強かったというのがGVIDOを選んだ大きな理由だ。なんたってGVIDOはスタイリッシュでカッコイイ。

 

利便性や機能性を考えたらiPadのほうが良いと思う。ざっくり言うとGVIDOは「譜面表示に特化したモノクロのPDFビューワ」である。基本的な操作は付属の専用スタイラスペンで画面に触れることによって行うが、譜めくり操作だけは指先でベゼル部分の左右に備えられているセンサーに触れることで行う。また、メニューのトップに戻る時、ペン先の設定を呼び出すときには、ベゼル下部にある物理スイッチを押すようになっている。書き込みや譜面の選択をはじめとした操作全般を指先のタッチだけでできるようにしたらもっと便利になるだろうと思うのだが、わざわざ操作系統を3つに分断しているのは、意図しない動作を避けるためだと思われる。特に演奏中に。「操作はスタイラスペンで、譜めくりは指で」行うことは、慣れれば何の問題もないがペンを紛失しないよう注意が必要だ(このスタイラスペンはワコム製だが、同じワコム製でもintuosのペンは流用できない)。

 

GVIDOではPDFのみ表示可能なので、スマートフォンやパソコンでPDF化したデータをあらかじめGVIDOに送っておく必要がある。データ転送方法は、Wi-Fiでのクラウド経由・USBケーブル経由・microSDカード経由の3通り。僕はiPhoneで譜面やコード譜を撮影してPDF化し、そのデータをiMacに送ってmicroSDカードでGVIDOに読み込ませる、という手順を踏んでいる。ちょっと煩雑だが…なぜか自宅のWi-FiをGVIDOが認識せず、また、いま使っているiMacがちょっと旧い機種ということもあり、この方法しか無かったのだ。ルーターのすぐ横で接続を試みてもGVIDOには「圏外」と表示されるのみ、おかげでユーザー登録もできていない現状である。もちろんセットリストの利用もできない。

 

余談ながらiPhoneのスキャン・アプリAdobe Scanは驚くほど優秀で、数値指定こそできないものの十分に満足のいくPDFデータを作成できる。譜面のスキャン~電子データ化にはもっと時間と手間がかかるものと覚悟していたが、呆気ないぐらいサクサクと作業が進んだ。

 

スタイラスペンを使って譜面に書き込みもできるが、ゆっくりめにペンを動かさないと描画が追従しない。消しゴムを使うときは更に反応が大きく遅れる。いずれもアンドゥ・リドゥはなく、一発書きの一発勝負だ。ペン先の太さは大中小の3種類、濃さも3段階あるほかに「白で書く」ようにも設定できる。消しゴムの大きさは2種類。書き味はお世辞にも良好とはいえず、画面の隅っこに行くと描画精度が下がるのはご愛嬌。何も書かれていない五線紙をPDF化して読み込んでおいて、そこにペンで譜面を書いていくこともできる。ただし、書き込みしまくっていると「譜面をめくるだけ」の時よりも電池の消耗が早くなる。

 

GVIDOのカーボン製外装は滑落防止のため鮫肌状の加工が施されており、ザラザラしていて手触りは良くない。これも慣れればどうということはなく、むしろツルツルスベスベでは危険だろう。合皮製スリーヴケースが付属するのは気が利いている。僕は別売りの洒落た本皮製ケースも購入したのだが、粘着テープで装着することと、このケースを付けるとmicroSDカードの着脱がやりづらくなるのとで今のところ使っておらず、付属ケースを活用している。

 

別売りのフットスイッチも購入したが、GVIDO本体だけで不便さを感じないためフットスイッチはほとんど使っていない。このフットスイッチは3つのスイッチを備えているが、割り当てられる機能が「ページめくり」「ページ戻し」「セットリスト表示」「無効」しかない。ここらへんはユーザーがもっと自由に機能を設定できるようにしてもいいんじゃないだろうか?

 

GVIDOはその佇まいからしてもクラシック用に開発された製品であろうことは明白で、例えばコンサートマスターがホールのステージ上でGVIDOを譜面立てに乗せていても何の違和感もない、心憎いばかりのデザインを持っている。iPadだとなかなかそうはいかないだろう(逆に、ジャズやポピュラーではiPadのほうが使い勝手は良いと思う)。

 

実際にGVIDOを演奏の現場で使っているが、すこぶる便利だ。特に、たくさん譜面やファイルを持ち運ばなければならなかった今までのことを考えると、A4ファイルと同じサイズのGVIDOひとつだけで済んでしまうのだから本当に有難い。紙の譜面のようにクルマのトランクに入れっぱなしには出来ないけど。

 

 

 

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2018年4月26日 (木)

クルマで生活が変わる

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沖縄はクルマ社会だ。公共交通機関はバスが主で、モノレールは那覇市周辺に限定されており、あとはタクシーかバイク、または自家用車での移動となる。亜熱帯の気候ゆえか自転車に乗る人は多くない。将来的には那覇〜名護を結ぶ鉄道が敷設される計画もあるけれど、当面はクルマが交通手段の大半を占めるだろう。

そんなクルマ社会だから、自分の普段乗るクルマが生活に及ぼす影響は大きい。自分のことで言えば、楽器演奏が生活の一部となっているというのに、なんで荷物を積めないような小さいクルマを選んでしまうのか。かつてはワゴンに乗っていた時期もあって、ドラムのフルセットを含むバンド演奏で使うほぼ全ての機材を積み込んでの移動が可能であり、すこぶる便利だった。しかし、今は「それほど便利でなくてもいいのではないか?」と考えるようになり、機材は必要最小限で事足りると割り切るようになった。実際、ドラムセットを運ぶような機会はこの10年でゼロ、あったとしてもドラマーに任せればいいだけの話…そう、自分一人で全部やろうとしなければどうにかなるのだった。

今乗っているNDロードスターは走るためのクルマ=スポーツカーであり、荷物を運ぶ用途はあまり考慮されていない。スポーツカーでも例えばトヨタの86みたいに四座であれば相当便利だろう。サーキット走行のため後部座席を設けてタイヤを積めるようにした、という話だが、無論実用上の問題を鑑みて四座にしたことは想像に難くない。自分の場合、所有して乗るクルマはロードスター以外興味がなかったので、ファミリーユースとかそういうことは全然考えなかった。我が子はもう成人して運転免許もありクルマも持っているから、わたくしは趣味まっしぐらでOK!二座のオープンカーでいけるだろう、と思ったわけだ。

しかしいざNDロードスターが納車されると、二名乗車した場合ベースギターが積めないという現実に直面することになる。この時、ベースアンプについてはトランクに入るサイズのものを既に入手していたのだが、楽器には考えが及んでいなかった。どうにか積み込めるだろうと思っていたのが、どうやっても積みこむことができない。悩んだ末に中古のSteinberger XL2を購入するわけだが、飽きっぽくて新しもの好きな自分としては格好のオモチャが手に入って大はしゃぎ、という趣きで、結果オーライとなった次第。

おかげで演奏の際に持って行く荷物が大幅に減り、「ハァー、撤収する時は大変だなぁ〜」などと憂鬱なことを考えなくて済むので、音楽と演奏に集中できて楽しい。体力的にも精神的にもラクだ。そのうえ、運転が楽しいクルマが楽しさを増幅してくれるんだから言うことなし!

あとは譜面かな。セッションごとに持って行く譜面ファイルを選択&交換したり、何を演奏するかわからない時はたくさんの譜面ファイルを持って行かなくてはならないのだが、これを電子譜面にしたらコンパクトで楽になるんじゃないかと思っている。

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KOMINE SA-223

Trunk

NDロードスターのトランクに、TrickfishのスピーカーキャビネットSM110とアンプヘッドBullhead 1Kを入れたハードケースが格納できない。いずれか片方ずつであれば何の問題もなく入るのだが、両方一緒に入れようとすると、アンプヘッドを入れたハードケースの角がはみ出してトランクリッドに干渉して蓋を閉められないのだ。アンプヘッドをハダカの状態にすれば格納可能だが、ロードスターの硬いサスペンションでクッションがなにもないトランク内に置いて移動中ずっとガタガタ揺られるっていうのは、さすがに怖い。

そこで、アンプヘッドをソフトケースに入れることにした。生地は薄手でしかしそこそこプロテクション性能があるもの…となるとモノは限られてくる。

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KOMINEというバイク乗り用バックパックを作っているメーカーのカバンが良さそうだったので、見た目と容量で購入。ナイロン生地にラバー素材をコーティングしてあり繋ぎ目がない(溶着されている)ので防水性も高い。生地はペラペラに薄いのだが、ヤワそうな見た目に反して手触りは非常に頑丈で、ゴムゴムしていることからクッション性もちゃんとある。容量は14リットル、Bullhead 1Kがギリギリで入って電源ケーブルとスピコンケーブルも押し込んでおける。

Komine2

まるであつらえたかのようにキツキツ。落下させたらアウトだろうが、それさえ注意しておけば格段に運搬は楽だ。ファスナーは止水ファスナーが採用されている。

Komine3

当然ながら、ロードスターのトランク内にキャビと一緒に余裕で入る。一時はアンプヘッドをバスタオルでぐるぐる巻きにして運んだりもしていたが、タオルの間からアンプヘッドが滑り落ちそうになり肝を冷やした事が何度かあった。第一、見た目が相当怪しい。それと比較するまでもなく、KOMINE SA-223はスタイリッシュでとてもよろしい。

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2018年4月25日 (水)

NAZCAスタインバーガー・ベース専用ケース

Case

Steinberger XL2用に使っているNAZCAのケース、外観は釣り用具入れにしか見えないが、ちゃんとした楽器用のケースだ。外部ポケットは必要最小限の小物しか入らないが、ご覧のようにケース内部には空間が多少あるので、もうちょっと小物類を入れることも可能…とはいえ、あまりアレコレ詰め込むのも野暮。せっかくだからこのミニマルな世界を楽しみたいものだ。いまのところ楽器のサウンドがあまりにも素晴らしく、アンプ直結で弾いているので、3mないし5mのケーブル1本、ストラップ、クリップ型チューナー、クリーニング用クロス、耳栓を入れている。

ケースのボトム部分、外装にはゴム脚も何も付いておらず、また、ケース内部もベルポーレン製プロテクターが敷いてあるもののケースを床にドスンと置いた際、楽器テール部分に掛かるであろう外力(=自分のラフな扱い方)を考えて、ウレタン製のクッションを追加した。XL2は床に直置きする時チューナーのつまみがギリギリ床と接触しないようデザインされてはいるものの、床の形状や楽器を置く角度によってはチューナーが床と接して長軸方向に対し横向きの負荷がかかることがあるため、極力テール部分を保護するようにしたいのだ。もちろん、楽器本体にも目立たないよう黒いゴム脚を貼ってある。

ケース内部は何もないように見えるが、ネック部分のクッション材が盛り上がっているので、ネックピローを追加する必要はない。この部分にベルクロがあるのでネックをしっかりと固定できる。もともとこのケースはSteinberger Synapse Bass用ということで小振りなXL2は余裕で格納できるが、ネック固定用のベルクロがあるお陰でケース内部で楽器がガタつくようなことはない。

XL2を購入して一ヶ月半が経過した。XL2は本当に素晴らしくて文句の付け所がないベースで、正直、29年前に作られた楽器にこれほど感激するとは自分でも思っていなかった。いろんなベースを弾いてきたからこそコレの良さが分かるのかもしれないし、また、他の人にオススメするようなベースでもないけれど。

ステッカー・チューンでもしようかと思って何枚かステッカーを買ってみたものの、いざ貼ろうとすると躊躇してしまい、結局貼れないままでいる。XL2の黒一色で無愛想なデザイン、このままで途轍もなくカッコイイからだ。なので、ストラップを付け替えることで見た目の変化を楽しんでいる次第。

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