弱いネック
Jerzy Drozd Legend 5は19フレット付近でジョイントされているのだが、固定された部分からヘッドに向かうネックが購入当初からごくわずかだが起きていた。もっとも、イェージィに限らず外国製のギター、ベースは、高価な楽器であろうとネックが反りやすいように思う。それは高温多湿な日本の気候が原因であり、楽器にとっては厳しい環境だと言われている。楽器以外にも、クルマにとっても非常に過酷な使用環境だと認識されており、世界の自動車メーカーが耐久試験に選ぶのは夏の東京だそうだ。
イェージィはネックが強くないのではなかろうか?という感触は入手後3〜4ヶ月ぐらいからあって、趣味の範囲で使うのであればともかくプロの現場で耐えられるような造りではなかったのではないか、と思った。少なくとも国内のプロ・ベーシストでイェージィを弾いている人を見たことがないし、海外でもパコ・デ・ルシアのバンドのベーシストが弾いているぐらいだった。もちろん自分が知らないだけで他にも多数ユーザーがいるのだろうけど、メディアに露出するほどの有名人が使うことはなかったように思われる。海外のベース・ブランド…古くはサドウスキー、フォデラ、近年ではレイクランド、長期間存続してベーシストに支持され続けているブランドは多くない。生き残るにはそれなりの理由があり、消えてゆくにもまた理由があるのだ。
イェージィがブランドを畳んだ理由の一つがネックの弱さであろうことは想像に難くない。これは新品の楽器を販売して何年か経ったのち、自分が作成した楽器をリペアする段階になって認識したのではないか?例えばサドウスキーは経年変化に備えてネック(指板)の形状を工夫してあり、ハイ起きしたネック(指板)を削ることによりストレートに戻し、長期間に渡って使い続けることが出来るよう設計されている。レイクランドはヘッド起きしないよう指板をナットからヘッド側へ延長して貼ってあり、さらにネック裏とヘッドの接合部は木の厚みを残している。
ウチのイェージィは制作後およそ9年ほど時間が経過しており、それは即ち日本に来てから9年という時間が経過しているということなのだが、それだけの期間を経てもなおネックがよく動く、ということだ。輸入ディーラーの話によると『イェージィは日本の気候に近いボックス内で完成した楽器をしばらく寝かせてから出荷している』そうだが、それでもなお日本の気候には馴染みづらいのかもしれない。
以下、調整の記録(2020年)。
1/13 Jerzy Drozd Legend 5 到着、電池交換
1/25 ネック逆反り
→ロッド緩めて、ローポジションのバズ解消
5/02 ネック順反り
→ロッド増し締め、12Fでリリーフ量0.5mm確保
6/07 ネック順反り
→ロッド増し締め、12Fでリリーフ量0.5mm確保
6/11 ネック逆反り
→ロッド緩めて、ローポジションのバズ解消
7/05 ネック順反り
→ロッド増し締め、12Fでリリーフ量0.5mm確保
7/09 弦交換
→DR Lo-Rider MH5-45 (45-65-85-105-125)
7/10 ネック順反り
→ロッド増し締め、12Fでリリーフ量0.5mm確保
8/19 ネック順反り
→ロッド増し締め、12Fでリリーフ量0.5mm確保
8/28 ネック逆反り
→ロッド緩めて、ローポジションのバズ解消
2~4月のあいだは順反りと逆反りを行ったり来たりしていて、弾きにくいと感じる程ではなかったため無調整。春を過ぎて湿度が増していくに連れてロッド調整の頻度も多くなる。一ヶ月に2〜3回まわしているわけだが、これはもう「ネックが弱い」という結論を出さざるをえない。他の所有しているベース、ギターもネックの調整は行うが、秋ごろに一回、春先に一回程度で、イェージィの調整回数は突出して多い。
イェージィは素晴らしいサウンドを持っているので調整さえ厭わなければ大きな問題ではない…と言いたいところだが、実際に週イチの頻度でトラスロッドを回す必要に駆られるのはツライ。うまく沖縄の気候に馴染んでネックが安定してくれると良いのだが。
最近のコメント