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2009年5月14日 (木)

首代引受人

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平田弘史の『首代引受人』をご紹介。1973年に雑誌連載された6編に加え、1971年に描いた読切りを1編加えて1999年に単行本化したもの。この読切作品には本編の主人公たる首代半四郎ではなく別の受取人のエピソードが描かれているが、後のシリーズ化の布石となった作品であり、再版を機会に収録された。

戦国時代、合戦の場において、国対国の戦争であっても個々の憎しみなどはないものであり、それゆえ己が生命の危機に及んだ際、金を払うから首を斬らないでくれと命乞いをして逃れるようなことがあったらしい(本書のあとがきにあるのだが、公式の記録に乏しいと書かれているため、もしかしたら史実ではなく著者の創作なのかもしれない)。このとき発行した手形は首代手形と呼ばれ、合戦終了後ただちに相手に支払われるものであった。
が、お互いの様々な事情により支払の催促に赴けなかったり、あるいは時間の経過とともに支払う気が失せて逃げ回ったりという事態も多々発生した。ここで登場するのが代金の受け取りを代行する首代引受人なる仕事である。首代というからには代金を払わない場合、その首を頂戴して帰ることになるわけだ。

戦場での命乞いなど武士として恥ずべき行為であるがゆえに、手形を発行した人間は「そんなものを自分が出すはずがない」と突っぱねるわけだが、もちろん、人間誰しも命は惜しいというのが本音。だからこの劇画に登場する手形発行人は、金銭の算段がつかず、あるいは武士たる者の誇りをいかにすべきかという本音と建前とのあいだで苦悩する。高潔で男らしい顔の裏面は、目を覆わんばかりの滑稽さと不条理に満ちている…これは平田氏が一貫して描いてきた武士の世界だ。

収録された7編はいずれもデッドエンドの悲しい結末を迎え、重い読後感を残す。が、世の中こういう軽くない話があって然るべきではなかろうか。後年、モーニングに掲載された『新首代引受人』には清々しいエピソードもあり、またフルCGによる描画で話題を呼んだが、機会あれば本作と併せて読むことをお勧めしたい。

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