アニメ・コミック

2009年12月 8日 (火)

ブロッケンブラッド

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塩野干支郎次著『ブロッケンブラッド』を四巻まで購入した。それぞれに巻数の表示はないのだが、実質的には続き物。内容は、中世の錬金術師ヨーハン・シュルツの手によって科学的に生み出された魔女の血統を受け継ぐドイツ系三世の主人公・守流津健一(ブロッケンの血族と呼ばれる)が、従姉妹・四方田礼奈の手&趣味によって女装魔女っ子ヒロインとなり、健一らと同じブロッケンの血族だがその能力を悪用する者達と戦う、というもの。吉崎観音、篠房六郎、百瀬武昭あたりの漫画に共通する感覚のバカバカしさが炸裂するバカ漫画である。ちなみに健一が魔法らしき能力を使うシーンは第一話にちょびっと登場したのみで、あとはほぼ、ステッキでブン殴る事により敵を倒している。バトルシーンはだいたい1コマか2コマで終結し、描写そのものが省かれている場合もある。

第三話あたりから「女装して潜入捜査する」というパターンが始まり、これが『ブロッケンブラッド』のその後を決定づけることになる。同時に「可愛く華麗に事件解決」という当初の設定から離れていくことにもなるわけだが、別に誰も気にしないだろうから問題なし。あと、チョイ役で出ていた大沼博士とその助手の存在も忘れられていくが、そちらの方向で物語を膨らませる必要がなくなったのだろう…というか第四話以降、主人公・健一はアイドル「ノイシュヴァンシュタイン桜子」として更なる受難を被っていくのだが、この設定があまりにも大当たりすぎて初期設定が全部吹っ飛んでしまったようだ。

本作品のポイントは、主人公である普通の男子が女装せざるを得ない状況に追い込まれ、嫌々ながらも仕方なく女装しているという点に集約されるだろう。作者はその時のキャラクターの表情を実に魅力的に描いていて、巷の「こんなに可愛いのに女の子のはずがない!」という叫びも納得できようというもの。主人公・健一と周囲の登場人物との思考に於ける落差もスゴイけど。

結局ブロッケンの血族としてその能力を最も悪用しているのは健一をあやつる礼奈なんじゃないの?という気がするんだが、なぜか誰もそこには触れていないw

超お勧めです。是非一読を!

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2009年8月13日 (木)

西遊妖猿伝

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諸星大二郎著『西遊妖猿伝・西域篇』第一巻を購入。オリジナルの『西遊妖猿伝』は1984年3月に単行本の初版が発行されており、途中で掲載誌を移したり中断したりしてはいるものの、足掛け25年に及ぶ長期連載漫画ということになる。しかも、現在に至るまで版を重ねている人気作品なのだ。

『西遊妖猿伝』は『西遊記』を諸星流に再構築&大幅改変したもので、主人公は石から生まれた石猿ではなく、人間の少年である。また、戦乱の続く陏〜唐の時代を背景にした物語でもあるため、リアリティーもある。僕は、このリアリティーこそが『妖猿伝』の命でもあり諸星漫画の真骨頂であるように思う。

諸星氏は決して絵がうまいわけではないのだが、「確かにそこにある」という存在感を感じさせる絵を描くことができる漫画家だ。読者を物語の世界に引き込むにはこの絵でなければならず、また、この絵だからこそ説得力があると言える。諸星氏の絵柄がかっこよくない、気持ちが悪い、不細工だ、だから読みたくない、という読者に無理強いするつもりはないけれど、漫画の大きな楽しみを逸したままでいいのか?とは申し上げておきたい。その入り口として『妖猿伝』は長編に過ぎるかもしれないが、楽しめることは間違いない。超お勧め。

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2009年6月11日 (木)

空想科学X

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saxyun著『空想科学X』を読んだ。ちょっと褪色した感じのいかにもな表紙にそそられるが、期待を裏切らない内容。あとがきによれば第一巻が出るまで10年の歳月を要したらしいが(4コマ漫画が4ページに7本、もしくは6ページに11本の月刊誌連載だから?)そんなことは微塵も感じさせないくだらなさが随所で炸裂する。オビに「科学のことはほっといて★」とあるように、そもそも科学とほとんど関係のない話ばかりだw

コトちゃんのひざげりに悶絶するハカセの姿が美しい。
お勧め。

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2009年6月 9日 (火)

けいおん!

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6月9日はロックの日!ということで、かきふらい著『けいおん!』を二巻まで購入。カバー折り返し部分に写真があるのだがこの作者氏、左利きなのだった。なるほど、だからベースの澪を左利きにしたのかと納得。

内容は、軽音楽部を中心としたゆるめの高校生活のお話で、4コマものとしても普通に面白い。『Beck』みたいに演奏シーンがガンガン出てくるような漫画じゃないのだが、それはまぁ表紙からもわかるだろうw

この漫画、男性キャラクターはクラウザーさんとか楽器屋の店員さんとか校長先生とかがほんの少し出てくる程度で、99%女の子のみ。しかしただゆるいだけではなく、「どうして4人そろって演奏するとこんなにいい曲になるんだろう」といった、音楽の核心に触れる部分もちゃんとあるのがヨイ。お勧め。

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2009年5月31日 (日)

ハックス!

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今井哲也著『ハックス!』第2巻を購入。相変わらず主人公・みよしちゃんのテンションと周囲との温度差がすごいのだが、シャイで言い出せないけど一緒にアニメ作りたい!という秦野さんはいつ合流するのか、クールな美少年・コジマくんも内に秘めたなにかがありそうだし、生徒会長の思惑も気になるところ。本巻では彼女が「隊長」と呼ぶクマの秘密も明らかになり、目が離せないw

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2009年5月29日 (金)

月刊サチサチ

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大石まさる著『水惑星年代記・月刊サチサチ』を購入。アワーズ本誌では本編の最後にオマケみたいな感じで毎回4ページ掲載されていた短編漫画で、今回イントロ部分を描き足し、初期短編2本を収録して単行本化された。

内容は、大石氏がアワーズで現在連載中の『おいでませり』と通ずる、思いついたものをとりとめなく描きだしているような感じ。普通にノンビリ読めるのは良いのだが、個人的には、毎回プロットを練るのが大変とはいえ、休憩を挟んででも『水惑星年代記』を続けて欲しかった。結局こういうスタイルのほうが作者は描きやすいんだろうなぁと残念な気がする反面、納得もするのだけれど。

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2009年5月16日 (土)

始皇

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鄭問(Chen Uen)の『始皇(シーファン)』をご紹介。1998年から1999年にかけてモーニング誌に掲載された、秦の始皇帝を描いた歴史ドラマである。始まり方が若干唐突で、これは秦王・政が幼少時に他国の捕虜となっていた頃のことを描いたもののようだ。もしくは、政の心の中にあるトラウマであろうか。読み進むうちにそのへんも語られてゆくが、巻末に年表があるので中国史を知らなくてもじゅうぶん楽しめるだろう。

物語は、秦王が韓国から才人韓非を招く、というか強奪するエピソードから幕を開ける。韓非の教えを受けた秦王は中国統一に乗り出し、一番最初に韓非の祖国である韓国を攻め落とす。次いで趙国に狙いを定めるのだが、名将李牧が立ちはだかり15万の秦兵を失う。しかし李牧の聡明さを快く思わぬ趙王・遷の嫉妬心を利用することで、諜報戦により李牧を罠に陥れ自害へと追い込み、ついに趙国は滅ぼされてしまう。秦王がかつて住んでいた趙の街を破壊し、住人を皆殺しにするところで本書は終わる。
本来ならばタイトルどおり秦王が中国統一を成し遂げるあたりまでは物語が続くはずだったのだろうが、何らかの事情で連載が中止されたものと思われる。残念ながら、続編は今日に至るまで発表されていない。

鄭問氏の存在を知ったのはこの作品が世に出るよりも数年前のことだったが、その独特の画風、精密かつ大胆な描画には驚嘆し、舌を巻いた。現在でも大陸系あるいは韓国の絵描きさん&漫画家諸氏の描画技術は素晴らしいものがあるけれど、それらは日本のアニメーションやマンガのコピーの域を出ておらず、鄭問の衝撃には遠く及ばない。ちなみに鄭問氏は台湾の漫画家である。

僕は彼の描く筆文字に心惹かれる。インタビューによると安い小さな筆を使って描いているという話で、筆の持ち方が日本の書道での持ち方とまったく違っていて興味深かった。ミケランジェロが好きという氏の、カラー絵における布の描画表現なども、まさしく我が意を得たりといった趣さえある。

卓越した描画技術と表現力を持つ鄭問氏ではあるが、古くささを感じさせることも多い。それは氏の描く世界が三国志や史記の時代であればこそ活かされ目立たなかった弱点だと思うのだが、彼自身、日本の漫画について「絵の上手い下手うんぬんよりも、表現力には学ばなければならないと感じている」と語っていたように、デフォルメや感情表現、内面の描写といった点では日本の漫画を読み慣れた目には違和感と不満が残る。無論、単なる挿絵でしかないアメコミよりは数段上なのだが。フランスのBDしかり、彼らがいま新しいと騒いでいる表現というものは、日本のマンガにおいて40年も前にとっくに行われていた。『行け!稲中卓球部』を読んだことあるの?と聞いてみたいものだ。

ともあれ、『始皇』をはじめとした鄭問氏の漫画には、日本人には知り得ないような様々なエピソードがちりばめられており、読み物として面白いことは間違いない。機会があれば是非ご一読を。

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2009年5月14日 (木)

首代引受人

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平田弘史の『首代引受人』をご紹介。1973年に雑誌連載された6編に加え、1971年に描いた読切りを1編加えて1999年に単行本化したもの。この読切作品には本編の主人公たる首代半四郎ではなく別の受取人のエピソードが描かれているが、後のシリーズ化の布石となった作品であり、再版を機会に収録された。

戦国時代、合戦の場において、国対国の戦争であっても個々の憎しみなどはないものであり、それゆえ己が生命の危機に及んだ際、金を払うから首を斬らないでくれと命乞いをして逃れるようなことがあったらしい(本書のあとがきにあるのだが、公式の記録に乏しいと書かれているため、もしかしたら史実ではなく著者の創作なのかもしれない)。このとき発行した手形は首代手形と呼ばれ、合戦終了後ただちに相手に支払われるものであった。
が、お互いの様々な事情により支払の催促に赴けなかったり、あるいは時間の経過とともに支払う気が失せて逃げ回ったりという事態も多々発生した。ここで登場するのが代金の受け取りを代行する首代引受人なる仕事である。首代というからには代金を払わない場合、その首を頂戴して帰ることになるわけだ。

戦場での命乞いなど武士として恥ずべき行為であるがゆえに、手形を発行した人間は「そんなものを自分が出すはずがない」と突っぱねるわけだが、もちろん、人間誰しも命は惜しいというのが本音。だからこの劇画に登場する手形発行人は、金銭の算段がつかず、あるいは武士たる者の誇りをいかにすべきかという本音と建前とのあいだで苦悩する。高潔で男らしい顔の裏面は、目を覆わんばかりの滑稽さと不条理に満ちている…これは平田氏が一貫して描いてきた武士の世界だ。

収録された7編はいずれもデッドエンドの悲しい結末を迎え、重い読後感を残す。が、世の中こういう軽くない話があって然るべきではなかろうか。後年、モーニングに掲載された『新首代引受人』には清々しいエピソードもあり、またフルCGによる描画で話題を呼んだが、機会あれば本作と併せて読むことをお勧めしたい。

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2009年5月 7日 (木)

銃夢

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引っ越し荷物の箱を開けたら、木城ゆきとの『銃夢』が出てきたのでご紹介。個人的には、SF漫画史上に残る傑作であり、士郎正宗の『攻殻機動隊』が西の横綱なら『銃夢』は東の横綱として対をなす作品と捉えている。コンピュータ関係に明るくない読者にとってはやや難解な『攻殻』だが、『銃夢』は特に何かの予備知識がなくても万人が楽しめる内容となっている。

SFは常に不人気ジャンルであり冬の時代が続いていると『アンドロイドV』を描いていた当時の石森章太郎が言っていたが、『銃夢』は果敢にもビジネスジャンプというおよそSFとは無縁の読者が手にするであろう雑誌に掲載され、結果大好評を得た。

強力な敵と戦うシーンが本作品の見所ではあるが、主人公であるガリィが自分自身の内面に問いかけたり決断する心象が大変丁寧に描かれており、本作の大きな魅力となっている。狂気と能天気の間を行ったり来たりする揺れ幅がものすごく、作者自身はストーリーを行き当たりばったりで展開させたと語っているが、確かに謎解きが不完全なまま過ぎてゆくエピソードはあるものの、にわかには信じられない内容だ。

現在、超豪華な愛蔵版も刊行されているけど、感動は変わらないオリジナルのビージャンコミックス全9巻をお勧めしたい。

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2009年5月 5日 (火)

天使な小生意気

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こんな漫画、買ったっけ?とスッカリその存在を忘れていた西森博之の『天使な小生意気』、さっき段ボール箱を開けたら底のほうから出てきた。そういえば、ヤンキー漫画『今日から俺は!』で名を上げた西森氏が新作ではラブコメ路線に走ったのかと意外に思いながら読んでいた覚えがある。

作者が一体どこから着想を得たのかまったくわからないが、「男らしさとは何か」という問いに対する回答であるとも取れるし、深読みすれば西森氏なりの「萌え」に対する回答とも受け取れる。連載を開始した当初、これで毎週ハナシが作れるんだろうか、10週打ち切りになるんじゃないかとハラハラしていたが、見事に長期連載の人気作品となったばかりでなく、僕は未見だが、アニメ化までされたらしい。

血気盛んな9歳の少年・恵がある日、魔法使いの格好をした男がいじめられているのを助け、そのお礼に魔本をもらう。ひょんなはずみで魔本から現れた悪魔に「どんな願いも叶えてやろう」と言われて躊躇なく「世界一男らしい男の中の男にしてください」と答えたところ、恵はなぜか女にされてしまう。時は流れ、恵は15歳となり高校へ入学。その美少女ぶりから様々な波乱を巻き起こす…と、粗筋を並べただけではどこが面白いのかサッパリわからないであろうこの漫画、まずは読むべし、である。

主人公をはじめとした登場人物それぞれの行動や反応、思考がきわめて巧みに描写されており、見飽きることがない。恵の過去が明らかになるにつれて次々に問題が浮上してくるのだが、副主人公とも言える蘇我の対応が感動的だ。機会があったら是非ご一読を。

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