12 TANGOS
2004年にアルゼンチンのブエノスアイレスで撮影されたドキュメント、『12タンゴ』をDVDで観た。2001年1月、アルゼンチン政府は財政破綻を宣言し「囲い込み政策」により突然国民全ての銀行口座を凍結。アルゼンチンの人々はある日いきなり一文無しになり、着の身着のままで放り出されてしまったのだ。そして失業。国内にはもはや仕事がなく、国外へ出稼ぎに行くしか生きる道がなくなってしまった。
大統領府や銀行に押し寄せ抗議する人々、叫ぶ人、投石する人、それに対して警官隊が鎮圧にかかって威嚇射撃したり催涙ガス弾を撃ったりする衝撃的な映像もある。
家族のため、家のローンを払うためスペインに渡ろうとする母親、ヨランダ(年齢は明らかにされないが50代と思われる)。国内で稼いだ金ではタンゴシューズすら買えない、自国より高く評価されるヨーロッパへ旅立とうとする20歳の若きダンサー、マリセラ。彼女のダンスパートナーでありかつて世界中を巡業した71歳のダンサー、ロベルトは死ぬまでこの地にとどまりたいと願う。この3人の姿と思いを軸にした作品で、タイトル通り合間合間にタンゴの演奏&舞踏シーンが挿入される。
政府の囲い込み政策は2006年にようやく解除されたが、なんともやりきれない話だ。本作のサブタイトルは「ブエノスアイレスへの往復切符」だが、「片道切符」にしたほうが合っているのではないかと思える内容である(原題は「さよならブエノスアイレス」)。
1年後、ヨランダはまだ家族の顔をみることもできず掃除婦の仕事を続けている。ロベルトは61年間住んだ家を売却してブエノスアイレスを離れ、コテージで暮らしている。マリセラはアメリカへ渡るビザを申請中。そう、マリセラだけが往復切符を手にする事ができたのだ。
愛する家族との分かれ、励まし、あまりにも厳しい現実、しかしそれでも人々は生きていかなくてはならない。もちろん、今は誰もが楽に生きていけるような時代ではないのだが、過酷な暮らしの中でも笑顔を忘れない彼ら彼女ら…ギュッと噛み締めたい映像作品だ。
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